わたしには、あなただけ
秘境の里の一角…まるで雪のように、白い花びらが降り注ぐ。
恋人達がやっとつかんだ幸せを、祝福するために。
青空と緑から生まれたような色の長い髪が風に靡くたび、小さな輝きを放つ宝石の髪飾りが揺れ
た。
純白の衣装に身を包み、紅を差した花嫁が花婿に手を引かれて姿を現すと、集まった友人達の間
からは歓声が上がった。
「はぁ…綺麗ですわね…!」
ラーチェルはうっとりと花嫁を見た。その横では、ターナも夢を見ているような眼差しだった。
「本当…すごく幸せそうね」
いつも一緒だった親友が、今は愛する者の隣で幸せそうに笑っている……ターナには、なんだか
エイリークが急に遠い存在になってしまったように思えて、少し寂しく感じられた。
そんなターナを知ってか知らずか、ラーチェルは彼女にくすりと笑いかけた。
「あら…でもターナにもエフラムがいるじゃありませんこと?」
「らっ…ラーチェル!もう!」
「ファード様…ご覧になっておられますか?エイリーク様の幸せそうなお姿を……うっ」
「ゼト…祝いの席で泣くのは止せ…」
エフラムは、ハンカチで目頭を押さえていたゼトに半ば呆れつつ、笑いを堪えていた。
「全く…ルネス聖騎士ともあろう者が…」
「今度ばかりはお前に同調するな」
首を横に振り苦笑していたヒーニアスだったが、キッと視線を鋭くすると、エフラムに向き直っ
た。
「…だが勝負はこれからだ、エフラム。聞く所によると、ここポカラの酒はなかなかに酔いやす
いと言うではないか。そこでだ…、私とどちらが長く正気を保つか勝負だ!」
気合いたっぷりに言われ、呆れ返っていたエフラムも断るわけにはいかなかった。
「…よし、負けはせんぞ」
「エイリーク!本当におめでとう!」
真っ先に、ターナとラーチェルが花嫁に駆け寄った。エイリークは少し恥ずかしそうに、だが嬉
しそうに笑った。
「二人とも…ありがとう。これからもずっと…友達でいてね」
「当たり前じゃない!」
「もちろんよ!」
笑顔で頷くと、ターナは、今度は花婿に向き直った。
「サレフさん…エイリークをよろしくお願いします!エイリークは…気が強い所もありますが、
優しくて、本当にいい子です…」
まるで花嫁の母親のようなターナの言葉に、思わずサレフも微笑んだ。
「承知した…」
「えへへ〜ブーケ貰っちゃった…私、次の花嫁になれるかなぁ?」
念願の物を得て満面の笑みを浮かべたターナは、エフラムに歩み寄った。
「ねぇ、エフラム…私も、幸せになりたいな…?」
「…なっ…何を言っている…酔っているんじゃないかターナ…!?」
そう言われたターナは、エフラムの周りに漂う酒の匂いと、テーブルの上に散らかった大量の空
き瓶に気がついた。
「酔ってるのはエフラムの方じゃない!さっきからお兄様と二人でガバガバと瓶何本も空けちゃっ
て!」
空き瓶の数に顔をしかめつつ、ターナは酒の匂いの中から、潰れかけたヒーニアスを引っ張り出
した。
「やだ〜!お兄様、お酒強くないのにどうしてこんなになるまで飲んだのよ〜!」
「うるさいぞ、ターナ…これは…お、男としての…しょ、勝負だ…!」
呂律が怪しく、明らかに酔っているとしか言いようがないヒーニアスだったが、ラーチェルは彼
の手を取って言った。
「しょうがない方ですわね…!こんな方は、私のようなしっかりした女性が傍にいないとダメな
のですわね…」
「…ふっ…こわいな…ラーチェルは…」
一瞬だけ判断力が回復したヒーニアスは、のろのろとラーチェルに視線を移し、口の端を上げて
笑った。予想を裏切られたラーチェルは、顔を赤くし、慌ててヒーニアスの手を離した。
「ポカラのキリィスラ酒は…美味いが、結構強いんだ。あんなに飲んで大丈夫だろうか…」
前途多難な恋人達を見遣り、サレフはそう呟き、苦笑した。
「まあ…じゃあ、明日は二人とも大変ですね…」
隣のエイリークも、困ったように、だが楽しそうに彼等の様子を見ていた。
二人は、目を合わせ、笑い合った。やがてエイリークは、そっとサレフの腕に自分の腕を絡ませ、
恥ずかしげに目を伏せた。
その後、幸せそうなポカラの夫婦に影響を受けてか、ルネス王宮とフレリア王宮でも相次いで結
婚式が挙げられたという。
《END.》
☆え〜・・・妄想のままに携帯で打った話だったりします。
実はエフラム×ターナ、ヒーニアス×ラーチェルもすごく好きな組み合わせだったりするので、
「いっそのことサレエイと一緒に出しちゃえ!」てな感じで登場しました(笑)。
ちなみに、ポカラのキリィスラ酒とは、ジスト&サレフ支援(BだったかAだったか)で話題になっていましたが、
酔いやすいだの強いだのといったことは自分設定なのでご了承を・・・
最後に・・・ゼトファンの方ごめんなさい・・・(笑)彼はこんなへたれじゃないとわかっているのですが・・・!
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